JR九州が廃線候補路線を掲示か?!

JR九州が廃線候補路線を掲示か?!
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【公開停止予定】
JR九州が、利用者数が少ないローカル線の利用状況として、区間別の通過人員数や営業収益等の情報を公表しました。

これらの路線が即座に廃止になることはありませんが、沿線自治体や専門家に対する現状の問題提起として、
そのきっかけになるようなアクションという意味合いを持っています。

同様の事例がJR北海道でも行われており、公表された路線別利用状況に応じて沿線の自治体とJR北海道が存続の有無に関して協議を進めています。

<公表データからの注目点>

公表されたデータは、3つに区分されており、新幹線・在来線(幹線)・在来線(地方交通線)としています。
そのため、同じ在来線ではあっても、幹線と地方交通線で区別することによって不採算性を強調している点が注目ポイントなります。

また、国鉄が分割民営化されてJR各社が誕生した昭和62年と平成28年の利用状況を比較している点にも着目する必要があり、
JR九州としても、変化の動向を知らしめたいと考えている意図が見て取れます。

筑豊本線・豊肥本線・肥薩線などのように、特急列車が運行しているような区間ですら、利用者数の減少による低迷状態となっている厳しさを見ることができます。

各線とも、観光列車の運行で辛うじて利用者数の維持が図られている実情ともいえそうです。

営業区間が10キロ程度しかないため知名度が低い後藤寺線は、年間の鉄道営業収入が7000万円(1日あたり20万円)程度しかないことや、
営業区間がが60キロ以上ありながらも吉都線では、これが8300万円程度であることを知り得ることも可能となっています。

この吉都線の金額は、営業が2キロにも満たない宮崎空港線の年間の鉄道営業収入およそ8300万円と同等になっています。

総じて九州南部の路線が不採算となっていますが、これらの路線の主な利用者は高校生による通学なので、朝夕の時間帯は集団で登下校する学生たちでにぎわっています。

こういった状況からJR九州としても、今後の高校生候補かつ利用者候補となりうる15歳以下の沿線人口を綿密に探る必要があり、これらの年齢層の人口の社会増動向にも注視が必要です。

日南線と指宿枕崎線は、これまで整備が遅れていた並行する高速道路の延伸次第では、マイカーや高速バスとの競争によって現在よりもさらに経営環境の厳しさが増しそうです。

肥薩線は、人吉以南の観光区間を産業遺産にしようという取り組みが進められているので、利用が少ないことによる廃線の危機はないと考えられます。

意外なところでは2017年7月に大雨で被災した久大本線が対象に含まれていない点です。

この路線は博多都市圏から湯布院や別府温泉に観光客を運ぶ路線でもあり、観光列車のゆふいんの森はもちろん、七つ星in九州も運行ルートに含まれている風光明媚な観光路線です。

そのため、久大本線では沿線の住民による利用が少なくても、通過人員数で採算が取れる区間であると見ることができます。

<今後の動向について>

今後のJR九州のローカル線の利用活性化には、沿線人口の増加を実現することは不可能なため、観光客を誘致するための観光きっぷや乗り放題きっぷの充実が欠かせません。

売上金額を増やすことよりも、既存の輸送キャパシティをカバーするための利用者アップが重要となります。

将来的には、こういった不採算路線は存続の有無を判断する議論が活発化し、上下分離方式での決着や観光列車の運行等の活性策が進められ、
最悪の場合には廃線という結論に向かっていくことになると考えられます。

ところが、地方に使われているお金の流れを見てみると、どんなに人口が希少なエリアであっても、道路建設・維持メンテナンスの予算や、森林整備の予算が確保されています。
これと比較して、地域の活性化や生活に対してもっと重要な存在である鉄道関連に対する管理や費用は、民間企業である鉄道事業者に押し付けており、行政の判断として公平性に欠けることになり適正ではありません。

近年のローカル線の廃線きっかけパターンは、大規模災害を受けた後の復旧における巨額の費用負担を回避した断念が多くなっています。

そのため、台風の通り道でもある九州では、今後も大規模災害による路線インフラの被害が発生すれば、それをきっかけにした廃線論が出てくる可能性があるので、
平時にこそ、鉄道事業者の損害保険の加入を義務付ける制度や、鉄道事業者と国・自治体との復旧負担割合などを決定していく必要がありそうです。